今日は午前中に用事を済ませて、夕方のすこし涼しくなったタイミングで畑へ行った。
蚊に刺されるかと覚悟していたけれど、今日はそれほど被害がなく、かわりに赤ちゃんバッタがわたしの膝にとまってきた。
涼しい風が吹いてきて、作業もはかどる。
「精が出ますね」
と、近くの区画を借りている男性が挨拶をしてくれた。
6月から、老人ホームの仕事の一環で畑をはじめることになり、市が管理しているレジャー農園の2区画を借りた。
市役所の窓口で、「法人で借りたいのですが」と伝えたら、個人でしか借りられない決まりなのだという。
担当の女の人は「聞かなかったことにしておきますね」と言って、わたしの名義で手続きをしてくれた。
とはいっても、農業はまったくの素人だ。
介護士さんたちは施設の仕事でいそがしく、遠くから通っているひともいるので、畑までは手がまわらない。
困ったわたしは、地元で半農・半サラリーマンをしている仲間に助けを求め、
アドバイザーとしてときどき手伝ってもらえることになった。
まずは、整地作業。
以前はベトナムの方が借りていたらしいけれど、畑をやめてからすっかり時間が経っているようで
雑草まみれで地面がまったく見えない状態。
ところどころに、前に植えられていた芋の葉っぱものぞいている。
北名古屋在住の仲間たちにも手伝ってもらい、草をかきわけて土を掘り起こす。
となりの区画の天野さんというおじさんが、「スコップを使って根っこから掘り起こすといい」と教えてくれた。
さらに、3日後に自分の区画に耕運機を入れるらしく、
「それまでに草を片付けられたら、ついでに耕しといてあげるよ」と、ありがたいご提案まで。
仲間の協力のもと、2日間でなんとか1区画を終わらせた。
もう1区画は草が少し残っていたので「草がないところだけお願いします」と伝えていたけれど、
月曜日に仕事が終わってから見に行くと、どちらも綺麗に整えられていた。
お礼を伝えるために何度か畑に通ったけれど、なかなかタイミングが合わず、しばらく天野さんに会うことができなかった。
それから夏祭りの準備でバタバタしているうちに、2週間ほど空いてしまった。
次の作業日を決めてから、久しぶりに畑へ行ってみると
あれだけ綺麗にしてもらった畑が、みんなに手伝ってもらった畑が、またもや雑草たちに覆われはじめていた。
「こんなに早く伸びるのか・・・・・」
わたしは膝から崩れ落ちそうになり、そのままよろよろと田んぼ道まで歩いていった。
それから、「また整地をやり直さなくちゃいけない」と仲間に伝えた。
雑草の成長スピードを痛感したわたしは、心を入れ替えて畑に通い、
職場の社長と社長補佐も、畑へ行って「オクラと落花生を植えたよ」と教えてくれた。
アドバイザー役の仲間やわたしの兄も手伝ってくれ、小松菜、にんじん、わけぎ、さつまいもを植えられた。
(さつまいもは、天野さんが「適当に切って植えていいよ」と言って分けてくれた)
畑をはじめると、いろいろな気づきがあったり、苦手だった虫たちにも慣れたり、
他の区画の方たちと交流できたり、いいことがたくさんある。
今日は池野さんという女性に会って、何を育てているのか教えてもらった。
ふいに地面にしゃがみこんで、「ほおづき、食べたことある?甘くて美味しいよ」と池野さん。
「ただの植物だと思ってました」と返すと、
「食べられるんだよ、ほら」と言って黄色い実を差し出してくれた。
食感はプチトマトみたいで、やさしい甘さでとっても美味しかった。
「昔は甘いものがなかったから、こういうのがおやつだったの。よく近所のひとに分けてもらったのよ」
そう言いながら、池野さんは自分の身長よりも大きく伸びたオクラの茎の葉っぱをよけて、
「これは白いオクラだよ、持っていって」と柔らかいオクラをとってくれた。
それから、「大葉も食べる?」「プチトマトも家にいっぱいあるから」と、次々に野菜を分けてくれた。
「わたし、今日収穫したのはオクラ1本だけです。こんなにもらっていいんですか?」と聞いたら
「夫とふたりじゃ食べきれないから」と言って笑った。
「施設のみんなで分けて食べます」とお礼を伝え、わたしは蚊に刺されている池野さんに何度も虫よけスプレーをかけた。
小松菜は無事に発芽したけれど、にんじんはこの猛暑でやられてしまったみたいだ。
美浜や西尾、北名古屋で農業をしている仲間たちのすごさを改めて感じながら、
今日もコツコツと農具の使い方や雑草との向き合い方を勉強している。