Stories

変化

前の記事から、ずいぶんと間が空いてしまった。
この数ヶ月間は、とにかくがむしゃらに走り抜けてきた気がする。

1月の下旬から地元の老人ホームではたらくことになり、
マッサージの仕事も続けながら、目まぐるしい日々を送っている。

今日はものすごく久しぶりに外を走ってきた。

老人ホームでの仕事は、事務などのパソコン作業が中心。
差し入れのお菓子にかこまれ、ときどきフロアをうろうろするくらいしか動かないので、すっかり体が鈍ってしまっていた。

走りに行く前は、いつも自分との戦いだ。

できれば家でゆっくり過ごしていたいし、わざわざ疲れることなんてしたくない。
でも、走ったあとに気持ちがすっきりと晴れることもわかっている。

持久力がないわりに、高校時代は陸上部に所属していたので、その感覚を体が覚えているのかもしれない。

思いきってウエアに着替え、ストレッチをしてから走りはじめた。

体が重い。すぐに呼吸が上がって疲れてしまう。

もう歩こうか・・・

一瞬頭をよぎったけれど、ゆっくりでもいいから目標の公園まで走ることにした。
リズムを刻んで呼吸をする。

「50メートルの種目があれば、お前は1番になれるんだけどなあ」

顧問の先生に言われた言葉を思い出す。

残念ながら、短距離の種目は100メートルからしかない。

なんでも中途半端なわたしらしいな、と苦笑してしまったけれど
あの頃はただ走ることが好きで、それはそれでよかったんじゃないかと

今になって思う。

もくもくと走っていると、いろんな記憶が交差していく。

呼吸が苦しくなってきたら、最後まで息を吐ききるように意識する。
部活の練習中に過呼吸になったとき、息を吸おうとすればするほど苦しくなった。

苦しいときほど息を深く吐かなければ、あたらしい空気は入ってこない。
体力が落ちた今、駅の階段をのぼるときなんかにこの経験が役に立っている。

走りつづけていると、体が温まって、足が軽くなってきた。
途中で雨が降ってきたけれど、汗だくになったわたしにはありがたかった。

最近、ふと思い出しては、昔の日記やメールを振り返っている。

アルバムの整理をしているときに、保育園のお誕生会でもらった絵本を見つけた。

最後のページに、先生と母からのメッセージが載っていて
先生が書いた「ちょっぴり気のよわいやすかちゃん」という言葉に、はっとした。

そういえば、わたしは入園式で熱を出すくらい、保育園に行くのがいやだった。

きょうだいやイトコにも泣き虫と言われていたし、もともと人見知りでもあった。
小学校低学年の頃は、休み時間を友達と過ごすよりも、ひとりで図書室へ行くほうが好きだった。

その性質がなくなったわけではなくて、
いろんな人と出会うなかで、少しずつ変化していったんだなあと気がついた。

昔の自分が、勇気を出して積みかさねてきたことがあって、その経験が今の自分をつくっている。

老人ホームではたらきはじめた頃は、戸惑うことばかりだった。

開所して間もない時期だったので、職員間のトラブルがあったり、ルールが統一されていなかったり。
認知症の方に関わることもはじめてで、びっくりすることも多いし、毎日いろんなドラマが起こる。

今はだんだんと慣れてきて、入居者さんたちの個性もわかるようになってきた。

現場で介護士さんたちの仕事を見ていると、どれだけすごいことをしているのかがよくわかる。
それを伝えていきたいし、地域のひとたちがふらりと立ち寄れる場所にできたらいいなと、
あれこれ考えをめぐらせている。

発達でこぼこの子どもたちと関わっていたときのように、
こちらが何かをしてあげているように見えても、実は何かをもらっていることがある。

大変さの中にもうれしい瞬間があって、それをしっかり捉えていきたい。

この場所でまく種が、いつか芽を出すように願って。